LINEで送る

 
01「僕の息子は失敗しないために最大限の努力をするんですよ。」
ある保護者の方のコメントです。
為末大さんの、「何故日本人は謝るのか?」という発言で、論議が交わされていましたが、
もう一つ、「失敗をしないための努力」をすることも、日本の国民的行動パターンになっているようです。
「失敗は成功の基」という言葉は、慰めに過ぎず、実際は失敗しないように無難にこなす方が良しとされているように感じます。
ここでは、失敗することが、どれだけ自分や自分の回りの人の成長につながるのかを、一部ご紹介していきたいと思います。

大勢の人の前で質問が出来ない子どもたち。

技術習得コースや出張コースで選手たちに「質問ありますか?」と聞いても、ほとんど子どもたちは黙っています。
しかし、トレーニングが終わり、帰ろうとするコーチの前には、質問がある子どもたちの列が出来ます。
「何故さっき皆の前で質問をしないのか?」
海外からの指導者たちはかならずこの現象に首をかしげます。私はこの疑問に対し、
「自分の質問が変だったらどうしよう?」
「馬鹿な質問だったら恥ずかしいし」という気持ちと遠慮から、質問は周りに人がいない場所でする傾向がある。と答えています。
しかし、人の前で質問すれば、そこにいる仲間が一緒に学べる機会に繋がり、5人が質問すれば、5つの疑問を皆と考えることに
なります。自分の質問が仲間のためになることを、子どもたちに教えてあげてください。
変な質問はないのです。かっこいい質問もないのです。わからないことを学ぶことがかっこいいのです。

無難にこなすことが美徳?

02
会社組織で、上層部が現場の意見を活かすことなく、物事を決めていくやり方は、その会社の成功を妨げます。
スポーツでも、無難に間違いのない練習をしていれば、新しい技もクリエイティブな動きも生まれません。
怒られないようにやっていれば、印象に残らない選手になってしまいます。そんな選手を優秀な監督は採用してくれるでしょうか?
無難な練習は最高の物に出会えないまま、誰の目にも止まらないまま、自分はずっと見えない存在のままでいることになります。
出来ないことが出来るようになるためには、昨日自分がしなかったことを今日するのです。
それが失敗だったら、間違いを正してくれる大人が、コーチが、傍にいます。自分の成長に貪欲になることが大事です。

問題は常に変化している

失敗しないで人生送れるほど、人生は簡単ではないことを私たち大人が教えてあげなければいけません。
毎日の生活で起きる問題はめまぐるしく変化しています。経験は大いに役に立ちますが、それですべてがスムーズにはいきません。
母親が身をもって経験している「子育て」と同じです。
経験を積んで対処法を学んでも、また新しい問題と疑問に明日直面します。
答えは1つではなく、状況に応じてその都度対応していくしかない作業です。
失敗は避けられないのです。失敗しないように最大限の努力をするより、沢山の失敗をして、経験を積んで、様々な対処法や、引き出しを増やす方が、実は成功への近道であることを教えてあげてください。

褒められるvs叱られること

03
アメリカは褒める教育が盛んな国です。褒めてほめて育てていく。しかし、時として、褒める育成を、はき違えている状況にも遭遇します。
あるサッカートレーングの時、ずっとまわりの仲間やコーチに、ふざけて蹴り続ける選手を叱ったことがあります。
その瞬間、「俺の息子を怒るなんて失礼だ!謝れ!」とまわりに響き渡る声で、その選手の保護者に怒鳴られたことがあります。
褒める教育はイコール叱らないことではないことは明らかです。
誰だって叱られて嬉しい人はいませんし、子どもは優しい先生やおばあちゃんが大好きです。
褒めて育成することは大事ですが、叱られるから誉められた時に嬉しいのです。
出来ない技を何度も何度も失敗して、悔しい思いをするから、出来た時の達成感はなんとも言えないものなのです。
その達成感を味わうために、また努力をするのです。
いつも簡単に無難に物事をこなしていては、この感覚を味わうこともなく、感動という素晴らしい人間の感情を味わえなくなるのではないでしょうか?
失敗しなさい。叱られなさい。悔しくて泣きなさい。なんで叱られたかを考えなさい。
その向こうにある感動を体験するために。
失敗しないように努力するのではなく、その失敗が何故悪いのか、そして同じ失敗を繰り返さないためにはどうしたら良いかを一緒に考えられる人になっていってほしいのです。

JYFAマーケティングディレクター 
上林 育子